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セルビアでの嬉しい話

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(平成18年9月)

天道館管長 清水健二

今夏のヨーロッパは大変な暑さであった。ドイツセミナー終了後はスロベニア(第二の都市マリボと地方都市ムールスカソボタ)そしてセルビアのクラグイヤヴァツ(舌を噛みそうな地名)に赴いた。この地が今夏セミナーの最終地である。首都のベオグラードではないが、セルビアの中心に当たる都市で、イエゼロ体育館で開催された3日間のセミナーには、旧ユーゴスラビアの共和国から約120名が参加して来た。初日は副市長はじめ市の体育関係の要人数名が出席のもと、記者会見が公立レストランで開かれた。

さて今回、セルビア天道流は大きく変わった。それは指導者(リーダー)が入れ替わったことである。前指導者は一人だったのを、今後は三人によるトロイカ体制になった。不安定な政局のために内戦が続き、合気道も途切れぎみだったが、ここに来てようやく安定したかの観を呈するようになった。いろいろな困難が伴ったが私も精一杯の協力が出来たことを嬉しく思った。

もう一つ嬉しいことがあった。体育関連全施設の総責任者が初日の稽古風景を見て、私に是非話したいことがあると通訳を通じて申し出て来た。私は道場使用について何かクレームでもあるのかな?と思っていた。ところが「この合気道は素晴らしい。こんな素晴らしい武道を見たことがない」と切り出し、「私は50有余年生きて来たが、今日のような気分のよい心地になったことはない。指導と演武を見ていると自然に心が澄んで来て体が解きほぐれる感じさえした」と、何とも嬉しいことをいってくれた。

実はその責任者は腰が悪く、朝起きる時も辛いらしいのだ。見学すると気分がよくなるので、「明日、明後日の土日の仕事休みも是非見学に来ます」と話し帰っていった。その言葉が外交辞令であったにしろ、これほどの素晴らしい賛辞を受けたことを大事にしてもっと頑張らなければと思った。もちろん、彼は2日間ともちゃんと足を運んでくれた。

長期にわたる内乱を経験したにもかかわらず、彼をはじめ多くの人々には精神的な荒廃は見られない。自分が素晴らしいと感じたものに対する素直な感動と追求心には、感銘を受けた。このことは文化や考え方の違いはあっても、セルビア人のみならずドイツ人をはじめとするヨーロッパの人々に共通するものである。海外に出るたびに認識し直している。